それが愛ならかまわない

 そう。今更どうしようもない。
 だからこそ自分の中から可能な限り前向きで建設的な行動を取ることにした。意地っ張りの虚勢だって四年も張り続けていれば本物になる。
 ただ高すぎる授業料の割にどうにも男を見る眼は養われていないらしいのが残念だ。


「いいの。どうせもう会う事なんてないし」


 例えもしまた偶然遭遇してしまったとしても、今回程動揺はしない。まともに相手をする事もないだろう。そういう意味であの場に椎名がいてくれたのは本当に助かった。二度目の大きな借りだ。


 改めて感謝の言葉を口にしようとしたその時、カランとドアに付けられたベルが鳴った。


「いらっしゃいませ」


 カウンターの端でグラスを拭いていた矢吹さんが入って来た客に向かって笑いかける。


「一人」


「お好きな席にどうぞ」


 聞き覚えのある声に椎名と揃って入り口を振り返る。

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