それが愛ならかまわない
「じゃあ長嶺さん、篠塚サン、お先に」
ピシリとそう言われてしまっては待ってよ、とは言えない。
椎名はすかさず身を翻して店内を出て行った。
一応聞きたかった事は聞けたけれど。そして椎名が大分前に食べ終わっていたのも事実だけれど。この場に残されてもちょっと困るんですけど。
「君達一緒に来たんじゃないの?」
「まあ、必要な話は終わってますから」
「篠塚ちゃんの昔の話なんてしたから機嫌損ねたかな」
「だから椎名君とはそんなんじゃないんですってば」
スプーンを口に運びながらジャブを仕掛けてくる長嶺さんに苦笑いで返事をする。
まあ彼の隠れ家が不本意にも私や長嶺さんにまで知られたという意味では多少機嫌を損ねているというのは当たっているかもしれない。
このシチュエーション、何となく既視感があると思ったらこの前の逆パターンだ。あの時は私が椎名を置いて出て行ったんだっけ。まあ今回の椎名はちゃんと代金を払っているけれど。と言うか昨夜の御礼に奢ろうと思っていたのに、長嶺さんが来たせいもあってそんな隙すらなかった。