風が、吹いた
「じゃ、俺前行くから、後ろ付いてきてくれる?」
「はい」
私が返事をすると、先輩は自転車を走らせ始めた。
もう大分、日も短くなってきていて、辺りが暗めのオレンジに色づいている。
先輩の広いけど、細めの背中を見ながら、
『同情』
という文字が、頭を占めていた。
私に近づいたって、何も良いことはありそうにないから。
浅尾が言う、目的が何かって考えるとしたら、それしかないんじゃないだろうか。
なんて、やっぱり疑う方に気持ちが行ってしまって、素直に先輩の気持ちを思えないのは、悲しい性なのか。