風が、吹いた



図書館では、好きな本を薦めあったり、2人とも読んだ事のある共通の本の好きな場面を話し合ったり、他愛の無い、それでも楽しい時間を過ごした。



外に出る頃には、完全に日が暮れて、寒さが増していた。




「寒いね。」




先輩が借りた本を鞄に入れながら、言う。




「そうですね。もう冬ですね。」




思わず首を縮込ませながら、同意して頷けば。




「家で、あったかい飲み物、ご馳走しようか?」




とてつもなくありがたい、それでいて魅力的な申し出を受けた。



しかし。



「今からだと…ご家族の方に、悪くないですか?」




当然のことを、気にしたつもりだった。
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