風が、吹いた
「んー、まぁ、大家さんの趣味だけどね。俺は、何にも持ってきてないし、買う余裕もないから。しいていえば、本は俺のだけどね」
小さめのケトルに蛇口から水をいれ、コンロにセットしながら、先輩が言った。
「そうなんですかー。大家さん、素敵。いいなぁ、益々この家気に入っちゃったな」
私はテーブルに両手で頬杖をついて、天井を見上げる。廊下よりもかなり高い天井は吹き抜けになっていて、開放感も抜群だ。
「千晶はこの家気に入ってたんだ?だから、昨日泣いてたのかー」
さらっと、納得したように彼は呟く。
「いや、そういうわけじゃ…まぁ半分はそんな感じなんですけど。」
自分の幼稚な考えや行動を、改めて他人の口から聞くと、恥ずかしい。