風が、吹いた

「先輩って、なんでも持ってるから。私の手に入れたものも、欲しいものも、全部持っていかれちゃう気がしたんです。」




仕方なく、かいつまんで自分の感情の分析結果を伝えてみる。




「俺、何でも持ってるように、見える?」




先輩は驚いたように、キッチンから、私を見た。




「だって、先輩、学校でもすごい有名らしいですよ?なんでもできるって。」




お湯が沸騰している音がした。



先輩は無言で、茶葉が入れてあるティーポットに、勢いよくお湯を注ぐ。



途端にアールグレイの香りが、鼻をくすぐった。
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