風が、吹いた
ー思い出せない。
こめかみに手をあてて悩む私に、一瞬、責めるような表情をした彼だったが、突然ふわっと微笑んだ。
自分の中の時間が止まったような気が、した。
「ま、いいかな。」
何がどうなってどういいのかはわからないけど、先輩のその笑顔に、釘付けになってしまう。
「どうかした?」
先輩が首を傾げる。
「…っいえいえいえ、なんでもありません……あ!私明日も学校なので、そろそろ帰ります!」
慌てて首をぶんぶん振ると、私は時計を見て、勢いよく椅子から立ち上がった。