風が、吹いた



タン、タン、タンと、梯子を下りるような音がして。




「わり。」




見知らぬ男子生徒が、寝転がる私の横に落ちた上履きを拾いにきた。



私は恥ずかしさのあまり、固まって動けない。




「…ふっ」



「!」






隠すように口に手をあてた彼は、確実に笑って、屋上を後にした。








失態。


恥ずかしいところを見られてしまった。




ネクタイの色からすると、3年生のようだ。



1年の自分が関わることは、もう今後一切ないだろう。



「ま、いっか。」




諦めて、溜め息を吐く。



今まで、こんな素な気持ちで、学校にいることなんてなかった。



でも、空がきれいだったから。



どこか遠くへ、いってしまえるんじゃないかって思ったから。



自分に言い訳して、もう一度空を見上げた。






キーンコーンカーンコーン




「しまった!」




予鈴が鳴って、私は慌てて教室に戻る。



結局、朝に続き、昼ごはんも食べ逃した。
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