風が、吹いた

いつも私を見つけてくれていたのは、やっぱり椎名先輩だった。



私が彼を見つけてたんじゃなく。



会ったのはきっと偶然じゃなかった。



だから、会えないのは。




彼が私を避けているから。






「寒いなぁ、今日は…」




寒さのせいにして、零れる涙がスカートに染みを作る。



視界がぼやけてしまったために、慌てて袖でそれを拭う。



ちらほらと登校中の生徒たちが見える。



門をくぐって、駐輪場に自転車を停めると、確認する。



先輩の場所を。



信号待ちの時に、白い家に立てかけてある自転車を、確認しようとするけど、もしも、椎名先輩が出て来たらと思うと、胸が苦しくなってしまって、それができないから。
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