風が、吹いた
「おはよー」
教室に入ると、それぞれの声が、聞こえる。
席替えの悪夢は、続いていた。
私の前が吉井になり、後ろが浅尾になったのだ。
必然的に、私は2人から離れられない。
「健気だねぇ、浅尾」
クラスの男子たちとじゃれ合う浅尾の後ろ姿を見ながら、吉井が言う。
「…どうでもいいけど、人の机に頬杖つかないでくれる?」
鞄を机の脇にかけて、座る。
「いいじゃなーい、ご近所のよしみってやつじゃないのー?」
悪びれもせずに、そのままの姿勢で、吉井はにやっと笑った。
「ねね。最近椎名先輩はどーしたのー?おとなしいよねぇ」
完全に面白がっている吉井は、わかってて、そういうことを訊く。
「知らないし。元からただの友達だったし。」
強がりなのはわかっているけれど、性格からして、弱音は吐けない。
「ふーん。それにしては元気ないね?くらもっちゃん。」
わかっていますとでもいいたげなその瞳に、白旗を振ることにした。
「…避けられてるみたい。」
「なんで?」
「わかんない」
完全降伏の私の答えに、んーと吉井が考え込む。
「きっかけとか、なかった?」