風が、吹いた
いつものふざけた調子じゃなく、真剣な表情で訊いてくる吉井を、今、初めて見た気がする。
「思い当たるのは………告白現場」
私がそう言うなり、あちゃーと吉井が手で自分の額を打った。
「冷徹人間、見た?」
「うん、みた。」
即答した私を見て、吉井はまた額を叩く。
「それだよ、きっと。」
それ、の指す言葉がわからず、ん?と小首を傾げてみた。
「先輩、千晶に会いづらいんだよ。」
「え。なんで?」
私には、吉井の言うことが上手く飲み込めない。
「だって、千晶、初めて見たんでしょ?どう思った?」
「…恐かった。」
でしょ?と吉井が片眉を上げた。
「きっと、合わせる顔がなかったんじゃない?」
そんなもんよ、男なんて。と言う吉井。
ーそうかなぁ。
予鈴が鳴ってしばらくしてから、小澤が入ってくると、吉井は私に背を向けた。