風が、吹いた



そして、息を呑んだ。




ー椎名先輩だ。



グランドで、彼はサッカーをしていた。



恐らく3年生は既に推薦入試が始まっていて、出席がまとまらない為、授業も自習が多くなっているのだろう。



センター試験だって、あと1ヶ月を切った。



なのに、サッカーをしている3年生のグループは、そんなのどこ吹く風で、楽しそうに走り回っている。



それは彼も例外でなく。



あの笑顔で。



そこにいた。






「くらもっちゃん………」







気がつけば、こんなにも。



貴方に会ってから、私はこんなにも。



貴方のことで、弱くなった。




床に落ちる水滴が、自分の涙だと認めるのは癪だけど、私は貴方を失うのが怖いみたい。




だから会いに行けないみたい。




だけど、会いたいみたい。


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