風が、吹いた
「僕はどうせ、若くもないよねー」
こんな佐伯さん、今まで見たことがない。そんなに仲間外れが嫌だったのかと内心焦り始める私。
「そ、そんなことないですよ!」
拭きかけのカップを一度目の前の台に置いて、体ごと佐伯さんの方を向く。
「…なんてね。」
ちらとこちらを見た佐伯さんの、眼鏡の奥にある目が笑っている。
「え!あー!」
途端にからかわれたのだと理解した。
「もうっ。冗談やめてくださいよ、ほんと。私の中の佐伯さんのイメージが崩れちゃうじゃないですか」
頬を膨らませて抗議した。