風が、吹いた






バイトを終えた帰りに、久々に買い出しにスーパーに寄る。



この時間の生物は割引率が高いので、まばらな客の中には、一人暮らしの会社員や学生が多い。




「うーん。明日の朝ごはん、何にしようかなー」




佐伯さんに夕飯をご馳走になって満腹中枢がマックスな今、食べ物への触手が働かない。



明日はゆっくりと朝ごはんして……と考えながらカートを押していると、鞄の中から携帯が振動しているのに気づいた。



ーこんな時間に誰だろう。



表示を確認すると、さっき別れたばかりの佐伯さんだった。




「はい、もしもし?」




珍しいことだと不思議に思いながら、電話に出ると。



《ごめんね、こんな時間に。》




佐伯さんの穏やかな声がする。




「大丈夫ですけど。何かありましたか?あれ、忘れ物とかしました?」




急に不安になって訊ねた。


《いや、それは大丈夫。用件は明日のことなんだけど…急で本当に申し訳ないんだけど、できたらお店に出てくれる?》




普段、日曜は佐伯さんが一人でお店に出るという日で、バイトは必要とされていない。




「いいですけど…珍しいですね」




相手に見えないとわかりつつ、受話器に耳をあてながら首を傾げた。




《それがね、いつもはそんなにお客さん多くないんだけど、急に明日、貸切の予約が入っちゃったんだ。》




貸切???




「なんの…ですか?」




《結婚式の三次会みたい》




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