風が、吹いた
切なげに揺らめく彼の瞳と目が合って、胸に突き刺さるようだった。
自転車から降りてとりあえずその場に停める。
「あの日、送ってくれたの、先輩だったんでしょ?なんで黙ってたんですか?」
もう、どうにでもなれ、と思って、一番の問題の根源を出してしまった。
椎名先輩が、息を呑んだのがわかった。
「佐伯さんに、何か聞いたの?」
「だったらなんだっていうんですか。」
どうしてこんなことになったのか自分でもわからないけれど、言いようのない苛立ちがむくむくと増え続けて、吐き出さないとおかしくなりそうだった。
「それで?避けたの?」
「だ、だって…」
言いにくい。