風が、吹いた


風が吹いた。
 



冷たい、それでもまだ温かさを含んだ風が、私の頬をなでていった。



ー夕方?



いつから眠ってしまったんだろう。




私は開けづらい目を、夕暮れに染まる空を確かめる為に開けた。



秋が深まってきた。冬がすぐそこで待っている。



枯れかけた芝生を手でつかみ、体を起こす。




ーいつから涙を流してない?




自分に問いかける。



哀しい想いはここにあるはずなのに。



自分は愛されることにわがままではなくなってしまった気がする。



残っているのは、麻痺したこの心。



ぼんやりとした思考回路。
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