風が、吹いた
「誰か、保健室に倉本の荷物持って行ってくれないか?」
昼休みも残り僅かとなった教室に、小澤の声が響く。
毎日恒例の3年生のサッカーは、先ほど椎名先輩がいなくなったことで、ギャラリーが減っていた。
私は浅尾が上げる前に、手を上げる。
恨めしそうな浅尾の視線をかわしながら、くらもっちゃんの教科書を鞄に詰めて、制服を一緒に持つ。
保健室へと向かう廊下で、昼休み終了の鐘が鳴った。
それぞれの教室へと急ぐ流れとは反対方向に、私はゆっくりと歩いた。
保健室に着く頃には、廊下には誰も居なくなっていて、学校全体を静けさが支配していた。
「ー?」
少し開いた扉から、話し声が聴こえてきたために、私は自分の身を固くして、耳を澄ます。