風が、吹いた
「…い、いやいやいやいや、無理です無理です!あれは嘘です!」
恥ずかしいやら、情けないやらで、後ろに後ずさる。
と、雪で湿った芝生を掴んでいた手が、滑った。
「った」
背中と頭に軽い衝撃。
思わず閉じた目を開くと、目の前には椎名先輩。
彼は寝転んだ状態の私の頭の両脇に掌をついて、私を見下ろしていた。
胸が一際、大きく高鳴った。
空は、真っ暗。
雪は、きらきら。
彼の長めの明るい髪は、さらさらと揺れる。
今まで見たどんなものとも違う。
子供のような笑顔で、彼は言った。
「好きだよ、千晶。」