風が、吹いた
ふゆやすみ
「倉本」
名前を呼ばれて、彷徨っていた思考がはっきりする。
慌てて席から立って、教卓に向かった。
「お前、優秀だから、ここでも大学でも特待生狙えるぞ。もいっぺん進学、考えてみろ。」
小澤は、私にだけ聞こえる声でそう言って、1枚の紙切れを手渡した。
「…はい」
返事だけして、元来た道を戻る。
席に着く直前に、後ろから負のオーラを出している浅尾と目が合う。
「倉本…俺、もう駄目かも」
一番最初に呼ばれた彼のがっかりぶりは、この世の終わりかと思うほどひどかった。
「私もどきどきしちゃうなー」
前の席の吉井は、まだ呼ばれない。
冬休みに入る前日の、2学期最後の登校日。
11月に行われた試験結果が返されているため、教室中のあちこちで、うめき声や喜びの声が上がっている。