風が、吹いた
「いただきます」
私の目の前に座り、テーブルに片肘をついて、じっと見守る椎名先輩。
太陽の暖かい陽射しが、部屋全体を満たしているので、夜に来た時よりも、更に広く感じる。
「あのー…そんなに見られてたら、食べにくいんですけど…」
フォークにパスタをくるくると絡ませて口に運ぼうとした手前で、一応声を掛けてみた。
「ごめん」
照れたように、先輩がそう言うもんだから、こっちが恥ずかしくなる。
「いただきます」
気を取り直したように、手を合わせると、彼はそう言って、フォークを取った。
緊張が和らいで、私もパスタを口に入れる。
「…おいひい」
むぐむぐと、余りの美味しさに夢中になって食べながら、彼に言うと、
「良かった」
と嬉しそうに笑った。
彼が淹れてくれたアイスティーの氷が、暖房に負けて、カランと音をたてて溶けた。