風が、吹いた
身長が高い彼は、私の家に居ると違和感がある。
座ってみても小さなテーブルが相手だと窮屈そうにしか見えない。
大して物を置いていないのが、唯一の救いだろう。
そんな不釣り合いな風景で、ふー、とココアを冷ます姿は、見ていて可笑しい。
「…何?」
ジロッとした目線を送ってくる。どうも含み笑いがバレていたらしい。
白々しく目線を逸らして、自分もココアを冷ます。
しばらく納得のいかない表情をしていた彼も、諦めたようにカップに口をつけた。
「千晶、今日佐伯さんの所、何時に行く?」
ココアをテーブルに置いて、椎名先輩が尋ねる。
「あ、はい。一応17時位に行くつもりです」
世で言うクリスマスの週は、佐伯さんのお店が、予想を遥かに越えて殺人的に忙しく、他の人がプレゼントをもらって幸せな朝を迎えている頃、私たちはクタクタで動けなくなっていた。
仕事納めの次の日の今日、そのお詫びと言って、佐伯さんが食事に招待してくれたのだ。
「手伝いとか、いるかなと思って。」