風が、吹いた
私たちが居る駅は、小さかった。
電子マネーが使える改札口もない。
窓口にひとり、駅員さんがいて、つまらなそうに机に向かっていた。
「ここ、何処?」
外へ出ると、ひゅっと吹いた風が髪を揺らしていく。
ふっと、潮の匂いが、混じっているのに気づいた。
「…海?」
「早いなぁ。もうわかっちゃったか。」
いたずらが失敗した子供のように、舌を出して先輩が言った。
「もう少し、歩くからね」
繋いだ手に、少しだけ、力が籠められる。
民家が続く道を、ゆっくりと歩いた。
少し大きめの道路に出ると、その向こうに、冬の海が見える。
車が来ていないのを確認して、渡った。