風が、吹いた
「先輩、蕎麦打つの?」
結局、椎名先輩が手伝ってくれることになった。
「8割だけどね」
蕎麦は速さが命なんだよ、と真剣に蕎麦粉をこねながら、言うので、申し訳ないけど、大笑いしてしまった。
椎名先輩が眉を寄せて、「蕎麦、いらないの?」と言ったので、大慌てで、今度は謝った。
そんな私を見て、椎名先輩も、笑った。
「良いこと教えてあげようか」
散々笑って、粉だらけになった手を叩いてふいに先輩がそう言った。
「何のこと?」
自分から言ってきたのに、彼は勿体ぶる。
「どうしようかな」
「なになに、知りたい」
「ちょ、包丁置いてよ千晶」
狭い台所で、押し問答を繰り返す。