風が、吹いた
佐伯さんを呼びにいくと、カウンターでお客さんと談笑していた。
私に気づき、ちょっと、と言って、こちらに歩いてきた。
「どうだった?彼。」
「…どうして、同じ高校の人なんですか。」
むすっとしながら私は答える。
どうしてかなぁと惚ける佐伯さん。
「どうせ、私が反対したって、佐伯さんはとるつもりなんですよね?」
眉間にしわを寄せて、見つめると、佐伯さんは、嫌だったの?と聞いた。
「いえ、いろいろ事情がありまして…いいですけど、彼と重なるのは土曜日だけですし。ただ、受験生ですよ、彼。大丈夫なんですかね。」
ああ、と佐伯さんは笑った。
「彼、受験しないらしいんだ。だからと言って就職するつもりなのかは知らないけど。」