風が、吹いた
「確かに私は友達じゃ嫌だと思ったんだけど。その先は考えてなかったかも。」
私の言った言葉は吉井には聴こえていないようで、彼女は一瞬何かを思い出すように視線を上にして、
「そーいうことか。」
と、独り言のように呟いた。
「…え?」
と聞き返した私に、吉井は何事もなかったかのように、
「さ、バーゲンいこ!」
と言うと、立ったまま、トレイと鞄を手にし、スタスタと歩いていってしまった。
取り残された私の耳に、
「あの時、何もしないって、いってたもんねー…」
トレイに乗っかったごみと一緒に捨てられた彼女の言葉は、届かなかった。