風が、吹いた
カウントダウン

カチャンという音と一緒に、拭きあげられたカトラリーがテーブルの上で打ち合った。




「失礼しました」




慌ててそれらを並べ直して、お辞儀する。




「珍しいね。」




カウンターに戻ると、佐伯さんがそう言った。




「すみません」




佐伯さんがコーヒーをカップに注いでいるのを見つめながら、謝る。







「孝一君が心配なの?」



佐伯さんの問いかけに、私は言葉を詰まらせた。




「…僕も気になるよ」




そう言ってにっこり笑うと、佐伯さんはトレイにのっけたカップとソーサーをカウンターに出す。



「7番テーブル」




私はそれを受け取ると、老夫婦が待つテーブルに運んだ。



今日はセンター試験の日だ。



椎名先輩は、特に何も言わなかったけれど、私たちはなんとなく、彼は行ったんだと確信していた。
< 256 / 599 >

この作品をシェア

pagetop