風が、吹いた
カウントダウン
カチャンという音と一緒に、拭きあげられたカトラリーがテーブルの上で打ち合った。
「失礼しました」
慌ててそれらを並べ直して、お辞儀する。
「珍しいね。」
カウンターに戻ると、佐伯さんがそう言った。
「すみません」
佐伯さんがコーヒーをカップに注いでいるのを見つめながら、謝る。
「孝一君が心配なの?」
佐伯さんの問いかけに、私は言葉を詰まらせた。
「…僕も気になるよ」
そう言ってにっこり笑うと、佐伯さんはトレイにのっけたカップとソーサーをカウンターに出す。
「7番テーブル」
私はそれを受け取ると、老夫婦が待つテーブルに運んだ。
今日はセンター試験の日だ。
椎名先輩は、特に何も言わなかったけれど、私たちはなんとなく、彼は行ったんだと確信していた。