風が、吹いた
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「くらもっちゃん」
昼休み、教室を出ようと、席を立った所を、吉井に腕を掴まれ、仕方なくまた座った。
「何?」
耳を寄せるよう手招きをする彼女を不思議に思いながら、耳を傾けた。
「大丈夫?」
囁かれた一言は、考えないようにしていた私の胸の痛みを思い出させた。
「…吉井は、勘がいいよね。本当に。」
机の上に視線を落としながら、私は言う。
「ここのところ、先輩と、どうなの?」
「…何にも。上手くいってる。今までと、何も変わらない」
問題は、まさにそこなんだけど。
近づいた筈の、先輩と、私との距離は、それ以上の進展を見せない。
それどころか。
「私…先輩のこと、何も知らないままなの。」
どこの大学を受けるのか、この先、どうするつもりなのか、教えてももらえない。