風が、吹いた
「何にもないことが、不安っていうのは、わがままなのかな?」
顔を上げると、吉井が心配そうな表情をして、私を見つめ。
「そんなことないよ。」
眉を下げ、私の手を掴んで励ましてくれる。
「椎名先輩は、今までと何も変わらず、私に優しいし、時間がある時は、大体私と一緒に居てくれる。でも…」
時々、彼との時間は、未来(さき)がないように見える。
「今日、これから会うの?」
「うん。」
昼休みに、私と先輩が会う日課は変わっていなかったから、小さく頷く。
「くらもっちゃんは、どうしたい?」
言葉を選んでいるように、ゆっくりとした口調で吉井が尋ねた。
「どうって?」
「椎名先輩に、どうして欲しいの?」
その質問に、私は答えることが、できなかった。