風が、吹いた

「何にもないことが、不安っていうのは、わがままなのかな?」




顔を上げると、吉井が心配そうな表情をして、私を見つめ。




「そんなことないよ。」




眉を下げ、私の手を掴んで励ましてくれる。




「椎名先輩は、今までと何も変わらず、私に優しいし、時間がある時は、大体私と一緒に居てくれる。でも…」




時々、彼との時間は、未来(さき)がないように見える。




「今日、これから会うの?」




「うん。」




昼休みに、私と先輩が会う日課は変わっていなかったから、小さく頷く。




「くらもっちゃんは、どうしたい?」




言葉を選んでいるように、ゆっくりとした口調で吉井が尋ねた。




「どうって?」




「椎名先輩に、どうして欲しいの?」




その質問に、私は答えることが、できなかった。
< 259 / 599 >

この作品をシェア

pagetop