風が、吹いた
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椎名先輩と会う場所は、冬の寒さのために、日当たりの良い空き教室に代わった。
渡り廊下の先に続く旧校舎への道を、窓から見える景色に気をとられながら、ひとりで歩く。
―椎名先輩に、どうして欲しいの?
吉井の言葉が蘇る。
ー彼の事が知りたい。
だけど、彼は、訊いても、答えてくれない。
ーずっと一緒に居たい。
でもそれは儚い願いのような予感がする。
―『大学、どこ受けるんですか?』
新学期が始まってすぐ、意を決して、訊いたのに。
彼はいつもと変わらぬ笑顔で。
―『どこにしようかな』
と言うだけで、その続きは、期待できなかった。
彼はー答えないことには、絶対に答えない。
それだけじゃなく。
吉井に指摘されてから気づいたけれど、彼は私に今まで以上は触れない。
それは、曖昧な私たちの関係がいけないのか。
それとも、彼の気持ちが、私と同じ「好き」ではないのか。
あるいはそのどちらでもないのか。
私にはわからなかったし、確かめる勇気も持ち合わせていなかった。