風が、吹いた
弛むことのない
ー2月になった。
大学受験真っ最中の3年生の登校日は1日もない。
「寂しい?」
朝、昇降口から一緒に上ってきた2階で、静まり返った教室を見つめている私に、浅尾が言った。
「…そんなことないよ。」
階段に足を掛けながら答える。
年が明けた後、浅尾が私を待っていることはなかったから、こうして横に並んで歩くのは、久しぶりだった。
「うちらも、もう2年になるんだね」
それは、確実な未来。
「クラス替えあるもんな。」
軽く頷きながら、階段を上りきると、隣に居た筈の浅尾がいない。
振り返ると、途中で立ち止まっているのが見えた。
「どうしたの?」
不思議に思って、首を傾げると、俯いてた浅尾が顔を上げた。
「…あのさ」
わずかに躊躇いを残しつつ、口を開く。