風が、吹いた



「倉本、先輩が受ける大学、知らねぇんだって。」




吉井は何も言わないまま、続く言葉を待っている。




「はは、あいつ、どうするのかな。」




力なく、笑う浅尾に、吉井が口を開いた。




「浅尾は、知ってんの?」



「知ってるよ」




間髪居れずに、言い切った浅尾に、吉井は言葉を失った。



沈黙が流れる。




「…じゃあさ、浅尾が教えてあげたら?」




お門違いだと思いながらも、それしか言えなかった。



「…やだね」




「どうして?」




一瞬浅尾の意地悪に腹を立てて、きっと睨みつけるが、その先の彼は意気消沈している。




「……どうして?」




今度は戸惑いを含めて、もう一度、尋ねた。

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