風が、吹いた
________________________
昼休み。
誰も待つことのない空き教室へ、向かった。
いつもはうるさい位にまとわりつく吉井も、やけに静かで、
朝から微妙に喧嘩したかのようになってしまった浅尾は、いつもに増して不機嫌だった。
「なんか、ちょっと落ち込むな」
歩きながら、一人言(ご)ちた。
渡り廊下を通って、端っこの教室に辿り着く。
扉を開けると、埃っぽい匂いがした。
使われていない一組の椅子と机は、いつもの彼の定位置で、愛着が沸いてしまった。
その椅子に腰掛けて、窓から見た景色には、灰色の雲が広がっている。
誰も居ないグランドは、寂しさを助長させる。
―『しばらく会えないけど、ごめんね。』
数日前、そう言った彼は、ひどく切ない顔をしていた。