風が、吹いた
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土曜の朝は、陽の光がカーテンの隙間から入り込み、暖かかった。
誰でも出かけたくなるような、秋晴れ。
「良い天気…」
重たい身体を起こし、昨日買ったパンをトースターにいれて、カップスープのためにお湯を沸かす。
ー洗濯機も回そう。
久々の快晴だというのに、私の気持ちは一向に晴れない。
理由はひとつ。
佐伯さんの店には、朝から椎名先輩が初出勤するだろう。
入れ替わりの時間は、顔を合わせなければならない事になる。
ベットにもたれかかって、お湯が沸くのを待つ。
くるりと見回した殺風景な部屋に、最近感じなかった、はっきりとした寂しさを見つけた。
―また、私の居場所はなくなるのかな。
やかんが笛を鳴らした。