風が、吹いた
3月になれば、また会える。
それが今の自分を支える。
何もかも片付いたら、終わったら、そしたら彼はきっと私に話してくれる。
そういう期待も持っている。
卒業式は、3月10日だった。
彼はその次の日18歳になる。
「卒業祝いもしたいし…」
机に片方の頬をくっつけて、呟いた。
「椎名先輩の欲しいものって、なにかなぁ。」
考えてみるが、思いつかない。彼が何かを欲しがっている所を見たことがない。
「喜ぶもの、あげたいなぁ」
目を閉じて、ぼんやりと考える。
遠くで、雨が降り出した音が、する。
弛(たゆ)むことのない、この想いは。
自分のものかと思うほど、熱を帯びていて。
時が経てば経つほど、募っていく。
貴方も同じかな。
同じように想ってくれているのかな。
貴方がどんな人でもいいから、
私は傍に居たいよ。
遠のく意識の中で、雨が激しさを増した音だけが、何故だかはっきりと聴こえた。