風が、吹いた
溶けた雪と咲かない桜
「ありがとうございましたー」
店員さんの声を背中に受けながら、外に出た。
寒い、夕方。辺りは暗い。
「喜んでくれるかな」
渡したときの反応を思い浮かべながら、手にぶら下がる小さい紙袋を見る。
その中にこじんまりとした包みが入っている。
思わずにやけてしまいそうになるのをなんとかとどめて、それを鞄にそっと入れた。