風が、吹いた


「千晶は、したいの?」




チョコレートを口に運ぶと、満足したような表情をしつつ、佐伯さんが尋ねた。



「もちろんです、誕生日も近いし。」




切り分けたチョコレートを佐伯さんが私の掌にも置いてくれる。




「できるといいね」




佐伯さんのその言葉に、若干の薄さと違和感を覚えた。




「佐伯さんは、しないんですか?」




確かに聴こえる位の声の大きさで言った筈なのに、佐伯さんはそれに答えなかった。
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