風が、吹いた
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「うー疲れたー」
ベットに飛び込みながら、今日の1日の終わりを噛み締めていた。
「あ、そうだ」
鞄に入れた紙袋を、ごそごそと音をたてながら、取り出してみる。
小さい箱には、有名なメーカーのロゴが入っている。
最近人気らしいこの文具に、実は自分が憧れていて、いつか使えたら、と思いつつ、叶わないでいた。
「万年筆……椎名先輩なら使いこなせそう」
ふふ、と想像して、笑ってしまう。
「いつ、渡そうかなぁ。やっぱり卒業式の次の日の方がバタバタしてなくていいかな。」
そっと箱を袋に戻しながら、考える。
―明日は、会える。
3年の登校日。
もう、3月になる。
まだまだ寒い日が続いていて、冬が終わりを告げることなんて、信じがたい。
疲れた体とは違って、目は冴えていて、中々眠りにつけなかった。