風が、吹いた
カランカラン
「こんにちは。」
佐伯さんが、笑顔で出迎えてくれる。
「おかえり。」
それには答えず、店内に目を走らせると、一番隅のテーブルで、接客している彼がいた。
壁にかかる時計を見れば、針は17時20分を指している。
「…もう、入れ替えの時間ですよね?」
声を小さくして、佐伯さんに尋ねる。佐伯さんは困ったように笑って。
「そんなに嫌なの?」
と逆に訊いてきた。
「いえ。でももうすぐ入れ替わりですよね?」
目を合わせないように、もう一度訊く。
「…残念だけど、今日は慣れるために朝から夜まで入りたいって言われちゃって、承諾しちゃったんだよね。」
「えっ…」
狼狽える私を前に、佐伯さんはごめんね、と全然悪気なさそうに手を合わせる。