風が、吹いた
「倉本、そこでいいから、聞けよ?」
浅尾の声が、ドアを通して伝わる。彼もきっとドアに背中を預けているんだろう。
「俺さ、椎名先輩の行く大学、先生たちが話してるの、聞いたんだ…」
体が硬直したのがわかった。
「…アメリカの大学だった。」
先を続ける言葉を紡ぐための力を蓄えるように、浅尾が一度、息を軽く吐いた。
「俺、言おうか、迷ってたんだけど…椎名先輩が言わないのに、俺が言えるわけないだろ。。。正直、まさか今日いなくなるなんて思わなくて。倉本にかける言葉が見つからなかった…ごめんな。」
浅尾の言葉に続いて、吉井の声がする。
「くらもっちゃん…あの日、倒れた日、保健室でのこと…ずっと黙ってたんだけど…椎名先輩ね、くらもっちゃんのこと、本当に好きだったと思う。私にね、言ったんだ…」
少し間を置いてから、彼女が続ける。