風が、吹いた
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―もう、8年か。
実験室へと向かう廊下を歩きながら、心の中で、呟いた。
先生たちからの強い勧めと、椎名先輩に励まされた記憶が自分の意志をまとめて、私は大学に主席で合格し、進学を可能にした。
企業に就職して2年目になる今年。
母校と共同研究を行うことになり、私も携わらせてもらえることになった。そんなわけで、4月から会社と大学の研究室を行き来している毎日だ。
実験室をノックして中に入ると、白衣姿の男性が2人、こちらに顔を向けた。
「東海林さん。田邊先生、大して用事があったわけじゃなかったみたいですけど」
少し恨めしげに言うと。
「あれ、そうだった?」
とぼける彼は、私と同じ会社で、この研究にリーダーとして関わっている東海林武彦。
一応、先輩になる。