風が、吹いた
「はい、これ。」
その隣に座って面白そうに見ていた博士課程3年の、川村亮祐が私に分厚いプリントを手渡した。
「先週までのデータ。大切に使ってね」
「ありがとうございます。」
受け取って、ファイルに仕舞う。
「なぁ、倉本、今夜暇?飲みにいかねぇ?」
その動作を見つめながら、東海林が言った。
「すみませんが、これから会社に戻ってこのデータ、まとめたいので。今日はこれで失礼します。」
一礼。