風が、吹いた

少しの意地悪をのせて、仕返しとばかりに聞いてみる。



目と目がばっちり合った。



なのに。


「ー千晶とおんなじ理由だと思うよ。あそこは俺の特等席なんだ。」




先輩は、間髪入れずにさらりと言い放った。





断りもなしに、千晶と呼び捨てて、訊いたことへの正確な答えはくれないなんて。

そんなの。




「ずるい」



私が無意識に呟くと、先輩は椅子から立ち上がった。



「…あの時、貯水槽のそばに寝転んでて」




こちらへ向かってゆっくり歩きながら、伏し目がちに先輩は話す。




「降りようとしたら、上履きが脱げちゃってさ。そしたら下に千晶がいた。」




そう言って目の前に立つと、先輩はしっかりと私の目を見た。






「千晶のことは、前から知ってたよ。」
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