風が、吹いた



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「だから、ごめんってば。」




時刻は21時。



地元のファミレスに呼び出されたのは、ちょうど電車を降りた所だった。



目の前には、ひたすら謝っているようで、実はちっとも悪いと思っていないことが丸見えな悪友、吉井幸。



「私は、ただ、くらもっちゃんのことも不憫だし、浅尾のことも不憫だっただけで…」




合わせた手の裏にある顔は、きっと笑っているに違いない。




「別にいいけど。余計なことしないでよね」




深い溜息と共に、そう私が言うやいなや、




「で?浅尾、何だって?」



途端に好奇心をぶつけてくる辺り、昔から変わらない。






「うーん。やっぱり、浅尾、良い男になったねぇ」




一部始終を話すと、吉井が唸った。




「で、くらもっちゃんは、どうすんの?」




自分で選んだ癖に、メロンソーダを空きっ腹に入れるのはどうかなと思いながら、ストローでくるくるとかき混ぜた。




「…正直、迷ってる」




カラカラと音をたてる氷を見つめつつ、呟いた。




「ま、浅尾は今までも待ってたし?これからも待ってくれるだろうけど…」




そこまで言うと、吉井は自分のアイスココアを一口、飲む。




「さすがに、あいつもキツい筈だよ」




念を押すように、迷ってる時間はそんなにないと、告げた。


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