風が、吹いた

―これで、最後にしよう。








ここに足を踏み入れた時点で、そう決めていた。







ここから始まったから。






ここで、終わりにしないと。








葉を撫でながら、思う。




かわいらしい丸みを帯びたこの葉は、何と言うのだろう。




「…私ね、言ってなかったの」




その葉に話しかけるように、呟いた。




「言いたくなかったから、今まで言わなかったの」




葉を撫でられて、花も震えた。




「ううん、それも違うかな」




言わなければいけない言葉を先延ばしにしたくて、どうでもいい言い訳を紡ぐ。



「言われなかったから、言わなくていいと、思ってたの。」




あの人が、あの時、この場所で、花を摘んだように、私も名前の知らない花を摘んだ。




「また、明日ねって言ったから」




花と一緒に、葉も茎についてくる。




甘い匂いのする花の香りを、小さく吸いこんで、




「待ってて、いいんだって思ってたの。」




最後の言い訳を、終わらせた。




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