風が、吹いた
隠された鍵
「浅尾、待った?」
「おっせーよ」
「そういう時は、今来たとこっていうんでしょうが。相変わらずくらもっちゃん以外には、いけすかない男ね」
吉井の睨みに、ふはっと思わず噴出した。
「それ、お前にも当てはまるよ」
「あら、失礼ね。私は誰にでも公平よ。ただくらもっちゃんは良い子過ぎるから、その分プラスαな特典がついちゃうのよ」
意味わかんねぇ、と呟きながら、浅尾が歩き出す。
「あー。なんでこの秋晴れの素晴らしい日曜日に、浅尾なんかと一緒に過ごさなくちゃいけないのかしら」
隣に並んで歩きながら、不平を漏らす吉井に、
「それは俺の台詞だ」
浅尾が忌々しげに、呟いた。