風が、吹いた
「ご注文はお決まりになりましたでしょうか」
白地に水色の線の入った帽子と、おそろいの制服を着た店員が、浅尾の上げた手に呼ばれてやって来た。
「俺、ブレンドコーヒー。あったかいの」
「えっと。。。三種のどっさりフルーツタルトと、アプリコットティーで。」
コーヒーしか頼まない浅尾に戸惑いながら、悩んだ末の結論を、店員に伝える。
「くっ、あははは」
店員が奥に入ったのを見計らって、浅尾が我慢出来ないとでもいうように、噴き出した。
「頼んだのが、最初に悩んでたどれとも違うから笑ってるんでしょー…」
じとーっと、肩を震わせながら笑っている浅尾を睨んだ。
「いや…はは、2つ頼めばよかったんじゃねぇの?」
まだ治まりきらない笑いの合間に、彼が息も絶え絶えに訊いてくる。
「だって、そしたら食べきれないもん。それよりさ…」
びしっと指差して、向かいの彼に詰め寄った。
「浅尾は?どーして頼まないのよ、タルト!」