風が、吹いた
「あの中だと―…」
自分の目線も校庭に向けて、往生際の悪い吉井が呟く。
私はというと、それとは反対に手元の弁当箱に目線を落とす。
この学校の校庭はそんなに広くない。
ましてやグランドの端と端にあるゴールを使って、サッカーなんぞやろうものなら、他のスペースは皆無だ。
そして多分に漏れず、この学校でも最高学年が偉いのである。
つまりはその3年生が陣取っている校庭に、他の人気はない。
ただ―
「きゃー!!!!!!」
黄色い声援を送る女子の群れを除いては、だが。