風が、吹いた

「私は森先輩とも、先輩の妹さんとも接点はなかったんですけど。電話した友達が仲が良かったみたいで連絡を取り合ってくれて。そしたらなんと、呉間化成の株主さんだったんですよね。」




呆然とする私に、加賀美が口を挟んだ。




「そうなの。それで、尚子ちゃんが研究所に居るって言うじゃない?ちょっとお邪魔しようかなって言ったら、千晶の話がでてきて。もしかしてって思いながら、訪ねてきたってわけ。一目見ただけで確信したわ。本当に久しぶりね。」




感慨深げに見つめる森に、私もなんとなく昔の面影を見つけて、少し安心する。



「突然、いなくなっちゃって。小さかったからどうしたのかもわからなくて、毎日泣いてたんだから」




拗ねるような口調で言う彼女につられて小さく笑ってしまった。
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