風が、吹いた
「…幸が、それに対して引っ掛かる理由は、何?」
視線を落としながら、小さな声で鈴木が訊く。
「あの、写真、かな。」
その答えを聞いて、鈴木が考え込むような仕草をした。
数分、経過しただろうか。
吉井は辛抱強く、鈴木の反応を待った。
やがて、深い溜め息と共に、鈴木が口を開いた。
「やっぱり、幸は専門書じゃ、もったいないな。」
観念したように、苦笑する。
「勘が良いよ、幸は。」
参ったなぁ、と溢した。
「本当にそこなんだよ。他社があのスクープを、あの会社にだけ許しているのは。」
そう言って鞄の中から、吉井がカフェに置きっぱなしにしたのと同じ雑誌を取り出して広げて見せた。
渦中の2人が寄り添って歩く写真は、一見、仲睦まじく見える。
「幸は、どこがおかしいと思う?」
「…角度。」
「ご名答。すごいわ、あんた。」
鈴木は呆れたように、いや感心したように頭を振った。