風が、吹いた
私の家はアパートの2階。
全部で部屋が4つあって、そのうちのひとつだ。
鍵を開けて中に入り、真っ暗な部屋に明かりをつける。
ただいまは、言わない。
よくある話でー、私は独りだったから。
つまり、そう、両親は早いうちに離婚。
母親に引き取られたものの、母親はかなり早い段階で私を捨て、知らない人を好きになった。
父親は音信不通。
親戚の家をさまよっていたが、高校入学を機に、独り暮らしを始めた。
奨学金とアルバイトでどうにかやっている。
母方の叔父が微々たる援助をしてくれている。
生活は質素ではあるが、不自由ではない。
ただ、普通の高校生より、独りというだけだ。
はー、と無意識に溜め息が溢れる。
自分がちっぽけだと感じたことが、今まで何度あっただろう。
時間が戻ればいいのにとは思わない。
だけど、先が見えない。